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こんばんは。せいかです。
先日10月15日から17日まで、
京都府南丹市の美山という地域にて、エコツーリズム大会が開催されていました。
美山といえば、かやぶき屋根の民家が建ち並ぶ、懐かしい雰囲気のある場所。
以前わたしもこの町にある田歌舎さんで鹿の解体体験でお世話になりました。
あとは有名なところでいえば、芦生の森という原生林があります。
ここは行きたいと思いながら、なかなか行けていないところ。
エコツーリズム大会の中日である16日にはエコツアーが設けられていて、
全部で5つのコースがあり、そのうちの1つのコースに私も参加してきました。
そのコース名もずばり、「教えて!かやぶき職人さん。屋根はどうやって葺くの?」と、
今年8月に『いえづくり教習所』に参加した私としては気になって仕方がないのでした。
そもそも茅葺きって一体なんのこと?

茅とは、ススキ、ワラ、ヨシ、チガヤなどイネ科の総称で、
それらや板、瓦を使って屋根を覆うことを『葺く』といいます。
昔と今の生活様式の変化や、森林環境の変化などによって、ここ50年で87%も茅場が消失している現状もあるそう。
びわ湖のある県で生まれ育った私としては、ヨシはすごく馴染みのある植物だけれど、
屋根を葺くにはすごく万能な素材だそうでそんなこと知らず、なかなか面白いお話を聞けました。
このかやぶき屋根、日本だけのものかとすっかり勘違いしていたけれど、韓国などアジアの国をはじめ、ヨーロッパでも取り入れられているようで、かやぶき屋根について学ぶ専門学校まであるんだとかで驚きました。
そういう視点で海外の建てものを見たことなくて、日本のかやぶき屋根の建てものの概念をぶっ壊すような斬新なアイデアがめちゃくちゃ魅力的です。
参考:【ビックリ!】茅葺屋根は日本固有のものではなかった!!!
ただ日本の方が海外よりも使う茅の量は多く、日本は本当に茅だけで屋根を葺くので、そうしないと雨漏りをしてしまうんだとか。
空から降り注ぐ水は一番上部の茎の間にしみ込み、茅の性質を上手に使って、自然にできた水路を通って流れ落ちていくとのこと。
なので、茎の氷面が水を吸着しやすく、ぬれやすい性質であればあるほど雨漏りはしにくくなるそうで、これぞ逆の発想というか先人の知恵なんだろうなあ、と。
まあいずれにせよ、かやぶき屋根は水はけをよくするため、急な勾配で葺くというのが常識なようです。
それでは実際に茅で屋根を葺いてみよう
今回使う材料は左から順に、稲藁、ススキ、藁ひも。

まずは紐のくくり方を学ぶことからはじまります。
すべては男結びでくくりつけるというシンプルな構造ながらも、
それがなかなか難しかったです。
ちょっとわかりにくいけれど、
まずはひもを交差させて、その交差部分は左手の親指で固定し、
片方のひもで円を作り、その下に円を作ったひもとは逆のひもを回し込みます。
動画はここまでの中途半端な形になってしまっていますが、
あとはここからは簡単で、
そのぐるっと回し込んだひもを円の中にいれて、
もう1つのひもを引っ張れば、ぎゅっと締まるのでそれで完成。
できました。
ただこれを強く締めるっていうのがなかなか難しく、
今回教えてくださった職人さんたちも、猛特訓をしたんだとか。
これさえマスターすれば、次に進めるということで、いよいよ屋根の葺き方へ。
まず稲藁の束をばらしながら全体が同じ量になるように平らに敷きます。
その後「叩き」という道具を使いながら、屋根と同じ角度に下から上へと
茅をつめていき、その上から竹で固定します。
そして、その竹を固定する方法が、最初に習った男結びなのです。
槍のような道具を使いながら、丸太を挟みこむように藁ひもを通します。
この藁ひもを通すときも屋根の表側と裏側にペアを組んで、
『針うけ』といって、ちゃんとひもが通ってるかどうかを確認し
ながら行います。
ひもが無事に通ったらギュっと堅く締めて、
ここで練習の成果を発揮するときがやってきます。
男結びーーーーーー!!!
それからはひたすら同じ作業を繰り返すそうですが、
軒先部分や軒の先端部分を作りつつ、
勾配も考えもって、建てものに合わせて厚みを調整していくようで、
これはもう職人さんならではの技だろうなあ、としみじみ。
だんだん上に登っていくにつれては、
丸太を足場糸をつかって男結びで固定させ、
その丈夫さはなんと10人乗っても余裕なんだとか!驚き!
その後、美山民族資料館に行って、茅葺きの屋根の裏側を見ると、
自分たちで体験したからこそわかることというか、
この仕事の美しさ、本当に頭が下がります。尊敬。
ちなみに美山のかやぶきの家はすべて職人さんが手入れしているので、
他の地域と比べても、圧倒的に美しいことで評判なんだとか。
美山のかやぶきの特徴について知る
屋根の種類は以下、3種類に分別することができます。
- 寄棟
- 切り妻
- 入母屋
その中でも美山の茅葺きの家は、入母屋という造りになっています。
この入母屋は仏教建築と共に大陸から伝わったんだとか。
そしてさらなる特徴として、壁も建具も板を使用しており、
棟の部分は千木(馬乗り)と雪割り(烏どまり)という角材を使っておられます。
さらにさらに!!
玄関のことを『庭』といい、地面から30cmあがっていることを『あげにわ』といい、それもまたこの美山のかやぶきの家の特徴なんだそう。
かやぶきの家は基本的に昔の囲炉裏やかまどのある暮らしだと燻され、それがあれば40年は持つそうです。
ただ現代的な暮らしをしようと思うと、持っても15年。
日当りよければ20年ほどは持つこともあるんだとか。
ここ美山にあるかやぶきの家は、全部で38棟あり、
古いものだと210年前の民家が存在するという歴史を感じる町です。
ここは世界遺産ではないけれど、原風景を保つために、集落ではお店をすることは自粛し、できるだけ昔の雰囲気を残しているそうです。
ただ現状としては、どの地域も同じですが、過疎地でもあり、高齢化が進み、小学生は全体で5人だけ。
また、かやぶきの家を維持するのにもお金がかかるけれど、
国や県からの補助があるので、なんとか持っているというお話も聞きました。
そして集落の至る所に計62基の放水機があり、美山のものは全自動。
茅は燃えやすい素材でもあるので、ひとつの民家から火が放出してしまうと、近くの家に燃え移ってしまう可能性が高いので、この放水機ですべての民家の棟に向かって散水し、飛び火するのを防ぐというのです。
そのために年2度検査のために一斉放水もするそうで、そのときの景色もぜひ見てみたいものです。
今回の経験から学んだこと

先人の知恵は毎度ながら感銘を受けることが多いですが、
やはり茅葺きの屋根の家もそのひとつでした。
自然と共生する生き方、これが本当に徹底されていた時代。
森林や茅場から材を取ってきて、それを屋根、あるいは燃料として使用し、
やがては古茅や灰になったものは肥料として田畑に還元されていくのです。
これぞ循環ある暮らしで、本当にすごいなあと頭が下がります。
ゴミの山にはならない地球に優しい材料。
材が限られていた時代にしても、
ここまで自然環境に逆らわない優しい暮らしができるっていうのはただただ感激です。
そういう先人の知恵が受け継がれて、今の日本の文化が形成されている。
だからこそ、それを後世へ受け継いでいきたいものです。
まだまだ美山の情報がたくさんあるので、ちょいちょい綴っていきます。
それではまた!
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